製薬企業や大学などのライフサイエンス研究で用いられる解析装置、所謂バイオ・ライフサイエンス解析機器の開発は、自社のコア技術(知財)や大学研究者との産学連携で進められるケースが多い。しかし、予算や時間をかけ、開発を行ったにも関わらず、販売面で苦戦するケースがある。どの様にすれば市場競争力のある装置開発が行えるのか? また、当社が提唱しているサーベイ(定量調査)を研究開発のPDCAサイクルに組み込む手法についても紹介したい。
ライフサイエンス装置メーカーにおける機器開発手法のトレンド
米国など海外メーカーにおけるライフサイエンス機器開発は、研究動向やエンドユーザーニーズの先読みによる製品開発手法(マーケットイン型)が主流となっている。一方で、日本国内のメーカーによる製品開発は、自社コア技術(知財)や大学研究者との産学連携などが出発点となり製品の完成度を高めて行く製品開発手法(プロダクトアウト型)が比較的多い様に見受けられる。
プロダクトアウト型製品開発のメリット
プロダクトアウト型で製品開発を進めるメリットは、その企業独自の強みを活かせることだ。もし既に特許を取得済みの技術であれば、そのライフサイエンス機器を上市した際に、競合メーカーには真似ができないユニークな装置としてヒットする可能性がある。また性能実証済みの基礎技術が存在すれば、基礎研究に余計なコストを掛けることなく、応用開発が行える。
プロダクトアウト型製品開発のウィークポイント
出発点がエンドユーザーニーズと乖離していた場合、販売代理店などを介してセールスを行っても、なかなか研究者に受け容れてもらえない(売れない)というウィークポイントがプロダクトアウト型製品開発には潜んでいる。プロトタイプが完成した段階で、ライフサイエンスや創薬系の展示会や学会で発表し、外部評価を得ようとするメーカーもあるが、それでも感触が分かる程度であり、根本的な改善計画には結び付かない場合が多い。
マーケットイン型製品開発のメリット
マーケットイン型で製品開発を進めるメリットは、予めエンドユーザーニーズを満たす製品の完成を目指すので、完成したライフサイエンス機器の訴求ポイントが明確で、研究現場で使われ易い(販売し易い)というメリットがある。
マーケットイン型製品開発のウィークポイント
マーケティングの結果次第では、本来想定していた製品イメージ(自社コア技術や連携先の知財を用いて作りたかった製品イメージ)から乖離するケースがある。また、競合製品に似た製品が生まれる可能性がある。
プロダクトアウト型 vs マーケットイン型 :結局どちらが良いのか?
ライフサイエンス機器の開発をプロダクトアウト型で進めるにせよ、マーケットイン型で進めるにせよ、双方にメリットもデメリットも存在する。どちらが正解というものではなく、どちらの視点も持つことこそが重要と言える。
競争力のあるライフサイエンス機器を創出する鍵とは?
ライフサイエンス機器開発においては、使用するアプリケーション(専用試薬キットなど)の開発を一体となって進めることで、パッケージソリューションとなり、アプリケーションに特化した専用装置化することで競争力を高めることが出来る。逆にアプリケーション開発(プロトコール開発)がエンドユーザー任せだと、競争力は低下することになる。つまり、その解析機器を使用する側(エンドユーザー=バイオ研究者)のニーズをしっかり把握しつつ、製品開発を進めることが、競争力のあるライフサイエンス機器の創出に繋がると言えよう。
製品開発でPDCAを回すためにBioSurveyの活用を
PDCAサイクルは「Plan」「Do」「Check」「Action」の4ステップで構成されており、製造業の品質管理業務で用いられる業務改善プロセスだ。この「Check(評価)」のステップで当社のBioSurvey(バイオサーベイ) バイオ・ライフサイエンス市場調査を用いることで、エンドユーザーニーズを見失わないプロトタイプ開発の方向付けが可能になる。BioSurveyは第一線で活躍するバイオ・ライフサイエンス研究者 約3800名(2020年10月 時点)をパネルとしたサーベイサービスだ。クライアントの社名は伏せてサーベイを実施するので、秘密性が高い新規参入プロジェクトや新製品のプロトタイプ評価等にも適している。
まとめ
ライフサイエンス機器開発は、プロダクトアウト型とマーケットイン型に分けられる。双方にメリットもデメリットも存在する。どちらが正解というものではなく、どちらの視点も持つことこそが重要と言える。その上でエンドユーザーニーズを取り入れたPDCAサイクルを回すことで、プロトタイプの最適な方向付けが可能になる。