ケーススタディ:遺伝子解析市場での競争優位性の確立

顧客の本音から導き出した新たなマーケティング戦略

弊社でご支援させていただいている外資系遺伝子解析機器メーカーD社のケースをご紹介します。同社マーケティング部から当社に最初に相談があったのは、次世代シーケンサー(NGS)が各社から発売され市場環境が大きく変動していたタイミングでした。分子生物学分野での遺伝子解析ニーズが高まり、市場は確実に拡大していましたが、それに伴って新規参入が相次ぎ、競合製品が複数存在していました。D社は独自の技術を持っていたものの、日本市場での効果的な差別化戦略を見出せずにいました。これまでの販売代理店を介した営業活動で得られる情報だけでは、研究者の本当のニーズが見えづらく、今後のマーケティング戦略の方向性に確信が持てない状況だったそうです。

D社からBioSurveyの相談を受けた弊社では、まずヒアリングを行った上で綿密な調査設計に着手しました。研究者の製品選択における意思決定プロセスを明らかにすることを主眼に置き、特に「製品スペック」については網羅的な選択肢を用意し、詳細な需要動向を定量的に引き出せるように工夫しました。

実施されたBioSurveyの結果は、D社に新たな視点をもたらしました。確かに、これまでの営業活動から得られていた印象と一致する部分も多くありましたが、同時に予想外の発見もありました。特に印象的だったのは、製品スペックに関する回答の質の高さでした。回答に協力した200名以上の研究者たちは、本当に必要としている製品機能やランニングコストの要件まで、極めて具体的で建設的な意見をもたらしました。

この調査結果を受けて、D社は様々な転換を図りました。まず、各研究分野に特化した詳細なホワイトペーパーなどの技術資料を作成し、ウェブサイトの訴求ポイントも最適化しました。これらの取り組みは、単なる戦略の修正に留まらず、営業アプローチ全体の見直しにもつながりました。

変革の効果は、すぐに現れ始めました。引き合いは着実に増え、新規台数も増加傾向を示しました。特筆すべきは既存顧客の満足度の改善で、これは日本市場に最適化された新たな情報提供が顧客のニーズに真に応えていることを示していました。

さらにD社は、この成功体験を踏まえ、定期的なBioSurveyの実施を決定しました。市場の変化を継続的にモニタリングすることで、変化する研究者のニーズに迅速に対応できる体制を確立したのです。

「研究者の率直な意見を得られただけでなく、その質の高さに驚かされました」とA社のマーケティング部S氏は振り返ります。「これらの知見は、私たちのビジネスに具体的な変革をもたらしています。特に、サプライヤーへの期待に関する詳細な回答は、今後の戦略立案に大きな示唆を与えてくれました」

D社の事例は、研究現場の生の声を聞くことが、マーケティング活動の改善につながることを示しています。研究者の本質的なニーズをしっかりと理解することが、ライフサイエンス研究支援ツールのユーザー獲得を成功させる鍵と言えるのではないでしょうか。